林業の魅力

Voice Vol.3
森川 孝誠Morikawa Kousei

林業に携わるきっかけは?

前職は大阪でハウスメーカーの大工をしていましたが、バブルが弾け仕事や生活環境に歪みが出て来た時、精神的に追い詰められた同僚を亡くすという辛い思いをしたんです。 そのことをきっかけに仕事や家族の生活環境を変えるべきではないか?と考えはじめた時、目に止まったのが林業体験会の募集広告でした。

実際にその体験会に参加し、座学での講習や現場実習など林業の入口となる知識や技術を体験したのち、2年間かけて家族と話し合い「年齢的にもこれが最後のチャンスでは?」と転職と移住を決めました。

以前は林業大学校のような技術を学ぶ場がなく、森林組合や村用の際に、親方衆から技術や感覚を教わり、またさらなる独学と色々な経験により今の技術を習得しました。

造林班の仕事内容

造林班の仕事は育林作業(地拵え、植林、除伐、間伐、歩道設置、枝打ち等)を重機などを使わずチェーンソーなどの小型機械を使い手作業でおこないます。 この仕事は田んぼや畑と同じで季節に応じた仕事をします。木は生きていて、その生長を助けたり、いい木になるよう人の手を加えていきます。

休憩時間は自然の中で四季の移り変わりを感じながらメシが食えて、仕事をしたらした分お給料になる、逆にしなければ報酬はそれなりになるがその分時間は自由。

他にも山に入って昔の人の工夫や歴史の跡を発見するのも楽しいです。 人が一人歩けるような古い林道を辿った先に隠里や棚田が現れたり、古い神社があったりするのを見ると、厳しい年貢制度から何とか逃れようとして誰にも見つからない山の奥を開拓したのだろうか…と思いを巡らせることもあります。

林業を選んで良かったこと

林業は危険な仕事なので信頼関係がないと絶対成り立たず、そういう班員と山に入れば阿吽の呼吸で仕事ができるようになります。人に気を使ってストレスを溜めることが無いです。

自分が林業に入るきっかけにもなった体験会に今では講師側で参加するようになり、最初の2回くらいは建前で話さないといけないこともあったが、それでは講習を途中でやめる人もいました。

これではダメだと思い、本当の林業の厳しさ、お給料の事など大変な部分も発信しました。

それでもやってみたい!と林業の道に進んでくれる人もいます。実は今一緒に仕事をしている班員2人は実際に私の講習に参加して京丹波森林組合に入ってくれた人材なんです。 もちろん今ではアイコンタクトで仕事ができる頼りになる仲間です。

自然と向き合うために

やはり自然が相手の仕事がゆえに他の仕事に比べて危険なことが多いこと。 自分も何度もケガをしたし、実際班員を亡くした経験もある。その辛い経験を誰もしないよう若いメンバーに伝え、安全に仕事ができるように繋げていくことが自分の使命とも言えます。 今自分が植えた0歳の木を50年、60年先の出荷時期まで世話することは不可能なことで、次の世代、さらにその次の世代にもつなげていかないといけない。

整備することで、山がきれいになり、そして水がきれいになる。そして動物が山で住みやすくなり里へ下りなくなる。 林業は人の生活を守ることにつながっていて、決してなくなってはならない仕事です。 そのためにも人材の確保と育成はこの先の林業の大きな課題といえます。

私にとって林業とは?

京丹波町へI ターンしてきた私にとって林業は田舎で暮らすための大切なコミュニケーションの一つです。

知り合いがまったくいない状況の中、大阪と違い村のみんなでする行事もたくさんあり、最初は戸惑いもありました。 そんな中で自分は木を切る技術があり、山で仕事をするということで「ちょっと木を切るのを手伝ってほしい」と頼りにされることもあって地域交流もスムーズになっていったと思います。

移住したころは戦後に出兵から戻り、京丹波の山づくりを一番初めにされた方たちも健在で、そんな大御所の方と自分が林業のお話しが出来て、かわいがってもらえたことも大きかったです。

林業を目指す人へ

木を切ることや重機を取り扱うことは短期間で誰にでもできることですが、それをいかに安全に確実に行うかはその人の器にかかっています。

自然を相手にするときは謙虚な姿勢で向かい合い、無駄に木を切りすぎず。

例えば「この木は切ってはダメだ」という第6 感のような「山の神様」の存在を感じる瞬間もあります。そういう時はあえて「切らない」という判断が必要です。 木や山を見くびってかかわると必ず怪我につながるので、技術を習得することはもちろん、目的意識や安全意識をしっかりと持ってこのフィールドで活躍してほしいです。

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